2018年09月01日
(雪国TODAY2018年9月号/全部1770文字/写真5枚)
晩夏の秋田市天徳寺山(泉五庵山)の市民墓苑に小雨が降り続いていた。人の気配はない。その静けさに盆のお墓参りのにぎわいが遠い昔のような錯覚にとらわれた。
先祖代々の墓をどうしようか。お盆休みで帰省した人たちが受け継がれてきた墓を更地に戻す墓じまいを決断するケースが加速している。(敬称略)

約6000基の墓石が建つ秋田市天徳寺山の市民墓苑。墓じまいが増加
天徳寺山の麓にある秋田藩主佐竹の菩提寺・天徳寺。県内曹洞宗の筆頭。その曹洞宗宗務所・禅センターは天徳寺山に通じる参道にあった。
宗派の僧侶が交代で宗務所に詰める。「お墓は個人情報の最たるもの。墓じまいについては何も言えない」
墓を守る人、そして墓じまいをする人。帰省した人たちの悩みを裏付けるように秋田市の4月から8月までの改葬(墓じまい)許可は、わずか4ヵ月余で昨年度を大きく上回っている。
墓じまい、檀家の減少はお寺の経営に直結する。お盆休み明けの秋田市市民課。担当者が首をひねった。
「改葬申請が目立って増えている。毎日のように窓口に届け出がある」。市民課によると、4月1日から8月17日まで97件の申請。29年度は1年間で58件、28年度は69件。
市民課は「墓じまいが一気に加速しているのかもう少し様子を見ないとわからない」とした上で、「墓じまいは届け出は必要だが、遺骨の受け入れについては自治体の許可が必要ない。遺骨がどこに移動するのかは把握できるが、逆に秋田市内に移動してきた遺骨の数は把握できない。市内の寺の墓が増えているのか減少しているのかもよくわからない」。
雨上がりの市民墓苑。管理する作業員がつぶやいた。
「きょうは墓じまいがない。こんな日はめったにないよ。毎日のように墓石が撤去され、更地になる。何しろ6000基もの墓がある。遺骨が墓苑内の合葬墓に移されたり、子どもたちの住む都会へ移動したりする」
天徳寺山の市民墓苑内での遺骨の移動については改葬許可の統計には出てこない。
誰もがいつかは迎える「死」。私たちの弔いの形はどこへ向かうのだろうか。
秋田県湯沢市の中堅仏壇メーカー・㈲新平堂が設計、製造している供養家具が注目されている。
従来の仏壇のイメージを一新。家具と仏壇のどちらにも使えるデザインは、都内で開かれた家具や生活雑貨の国際見本市「東京インターナショナル・ギフト・ショー」で、最高賞を獲得した。
いかにして供養家具が生まれたのか。湯沢市川連町の新平堂を訪ね、社長の高橋恒仁に供養家具誕生の背景を聞いた。
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