2018年03月01日
(雪国TODAY2018年1月号/全文3700文字/写真14枚)
深まるパリの秋。イルミネーションに照らされた凱旋門前の高級レストランでシェフ、ソムリエたちが秋田の地酒、食と対峙していた。秋田の地酒がパリの高級レストランに本格デビューを果たす。事業の実現性を目利きが見極めた。北都銀行地方創生部の力量が問われる2018年が明けた。(敬称略)
2016年3月の大仙市。金紋秋田酒造の酒蔵は残雪の中にあった。パリとロンドンから来県した計10人のシェフとソムリエ。酒蔵で各種地酒の試飲を繰り返した。ある者は酒を口に含んでは頬を膨らませたり、すぼめたり。目を閉じたまま喉越しを確かめている者も。
しばらくすると、「蔵にこの酒は何本ありますか」
ジョエル・ロブション氏が経営するラトリエ・ド・ジェエル・ロブション・エトワールのシェフソムリエが尋ねた。それは金紋が主力商品とする古酒だった。
「四合瓶で1000本ほどです」
社長の佐々木孝が応じると、
「全部買いたい」ソムリエはこともなげに微笑んだ。
「パリに全部持っていかれてはかなわない。500本はこちらに譲ってくれ」
ロンドンから参加のソムリエが慌てた。
北都銀行執行役員の齋藤明弘54歳。仙台市出身。齋藤は3年半前、海外ビジネスのスキルを買われて、みずほ銀行から北都銀行が傘下に入る仙台市に本社を置くフィデアホールディングスに転籍。
2年半前に北都銀行地方創生部に迎えられた。みずほ銀行ではハノイ支店長、インドネシアみずほ銀行社長を務めるなど海外ビジネスのエキスパートだ。
金紋視察の一行の中心的存在として、ミシュランの星付きレストランを多数経営するジョエル・ロブションの子息ルイ・ロブションがいた。「自分の味覚に絶対的な自信を持つソムリエにアプローチし、認められれば、秋田の日本酒のブランド力が高まる。やはり、ルイ・ロブション氏のように、ソムリエの資格も持ち、一流のソムリエとの人脈がある人たちと組まなければ、秋田の地酒の安定した輸出は難しい」と齋藤は実感した。
ルイ・ロブションはフランスワインを日本に輸入するビジネスを軌道に乗せていたが、新たに日本酒をフランスのミシュラン星付きレストランに輸出するビジネスにも動き出していた。そうした中で国内の酒蔵を視察、日本酒の試飲を精力的に行っていた。金紋視察もその一環だった。
秋田の地酒を知ったことが2016年10月のジャパンエクスキーズ社設立につながっていく。
「フレンチの皇帝と呼ばれ、世界一ミシュランの星を持つジョエル・ロブションを父親に持つルイ・ロブションが、日本酒を中心とした日本産食品、日本の伝統工芸品の海外展開、輸出をコンサルティングする新会社、ジャパンエクスキーズ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:ルイ・ロブション)を設立したことをお知らせいたします」。
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