2018年02月01日
(雪国TODAY2018年2月号/全部1665文字/写真5枚)
いったい、いつ寝ているのだろうか。時にこんな人に出会うことがある。多忙な男だ。秋田市新屋で福祉健康 新屋温泉を営む髙橋大和68歳。本業は稼業の髙松木材㈱社長。ある時はディナーショーの前座でムード歌謡を歌い、地元の保護司を務め、宅建協会では存在感を発揮、秋田県林業技術交換研修会で秋田の林業の未来を語った。地元民放3局でパーソナリティーを務める彼をスタジオに訪ね、〝大和ワールド〞をのぞいた。 (敬称略)

エフエム秋田で左から石川、髙橋、金子
雪深い秋田市椿台。日が暮れてFM椿台のスタジオに灯りがついた。ディレクターの黒崎ゆり子が「スタート」の合図を送り、放送回数720回を超える同局の最長寿番組『髙橋大和のこれこそ真昼の夢トーク』の収録が始まった。
この日、髙橋が招いたゲストは秋田県庁裏の市町村会館で味どころ「しの八」を営む高堰喜代忠69歳。店を開いて40年。高堰の人柄と絶品の魚料理を楽しみに県庁職員、県議、山王界隈の社長、会社員らが来店する。
「高堰ってどう書くの。そうか、堰の文字の右側は1日中、女を囲むか。うらやましい名前だ」。髙橋の軽妙なトークが始まった。

FM椿台でしの八の高堰店主
「大和さんが招くゲストは多士済々。今回のゲストのしの八さんで250人。多分、お客さんは何年もお店に通って定年を迎え、山王界隈から去る。昇進、転勤、歓送迎会など自分の仕事人生の節目でしの八が重なる。しの八のご主人はどんな人だったのかな。聞いておけば良かったと後で後悔する人も。でも、FM椿台で大和ワールドに引き込まれ、高堰さんの人生を知る人が多いと思う」と黒崎。
髙橋がFM椿台に招いたゲストにそれぞれの人生があり、リスナーにもそれぞれの人生。
高堰さんは旧阿仁町中村の出身。クマ牧場の近くだという。4代続いたマタギの家で、旅館を経営していた。米内沢高校を卒業後に東京・目黒の雅叙園に就職。料理の世界に入った。東京での修行は10年。秋田に来て2、3年後にしの八を開店した。
「趣味は海釣り。釣った魚を店で提供した。忘れられないのは体調95㌢のヒラメ。県記録だった。秋田マリーナから1時間半の海域で30分の格闘の末、釣り上げた。刺身50人分、お客さんに食べてもらった」

新年会で髙橋と歌手の大黒舞

FM椿台で和やかに収録
夢はなんでしょうか?
番組の最後に高橋が聞いた。
「69歳で夢を語るのもなんですが、もう一度、京都か東京で料理の修行を積みたい」
『髙橋大和のこれこそ真昼の夢トーク』のエンディング曲が流れ、FM椿台の収録の夜が更けていく。
ABS秋田放送の長寿ラジオ番組『まめだす!ねんりん倶楽部』。
「今日のゲストは豪雪の横手市雄物川町沼館から息をふー、ふー吐きながらスタジオにたどり着いた辻田与五郎さん。長男なのに五郎さんだそうです」
同局のベテランアナウンサー佐藤美知子が歯切れ良くゲストを紹介した。
「血液型と人間関係、成功の哲学を研究している。講演が大好き。でも困ったことに研究者として周囲に認知されていないかも。漫談家と思っている人が多い」
辻田が不満そうにリスナーに訴えた。
辻田も、佐藤も、髙橋も、番組の進行役の秋田大学教授の佐々木和貴も全員年輪を重ねた60歳代。スタジオに〝まめな人たち〞の空気が流れた。「番組が始まって8年。これまで大和さんが招いたゲストは100人かな。多彩な人脈にただただ驚いている」

ABS秋田放送で左から辻田、佐々木、佐藤、髙橋
髙橋の秋田高校同期で事務用品や事務機器を扱う㈲金圓の社長、金子真悟がぼくとつとした語り口でマイクに向かっている。
エフエム秋田の2階スタジオ。几帳面な人柄と違った一面を持つユーモアあふれる小話が大好きな金子を『髙橋大和の知の泉・人の森』のゲストに招いた。
秋田市大町の交差点で信号待ちしていると、交番のおまわりさんが注意した。
「おばあさん、赤信号で渡って来ると危ないよ。車にひかれたら大変だべ。信号が目に入らねがったか?」
「なも、おまわりさんが目に入らねがったもの」
「マイクの向こうで、リスナーがクスッと笑う。そんな番組です」とアナウンサーの石川文子が締めくくった。
カテゴリ:記事