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名物社長と新屋温泉 新春の湯加減いかが 樹齢250年ヒバの大黒柱湯けむりにかすむ

(雪国TODAY2018年1月号/全文960文字/写真2枚)

新屋温泉の新春。大浴場は湯けむりにかすみ、主人の名物社長は温泉に浸かって喉の調子を確認していた。疲労感はなかった。年の瀬から正月にかけて地元民放3局のラジオ番組でパーソナリティーをこなし、充実感に満たされていた。

温泉を経営する髙橋大和さん68歳。多才な男だ。本業は地元新屋の高松木材(株)の社長。自らを〝ふろ歌手〞だという。得意はムード歌謡。県内のディナーショーで前座を務めることも。

温泉は藤里町産のヒバを惜しげもなく使って15年前にオープン。大浴場の樹齢250 年を超える大黒柱が黒ずんで堂々とした風格を漂わせていた。「以前は社長の母親がフロントで客に対応。にこやかな笑顔と飾らない人柄が親しまれた」と常連客。その母親は亡くなったが、変わってヒバの大黒柱が訪れる客を迎えている。

 

地下700㍍から湧く湯量は毎分260㍑で41・5度の強塩泉。県分析センターによると、ヨウ素イオン濃度が全国の温泉の中でもトップクラスの高い数値。新屋温泉のキャッチフレーズは「痛みが和らぐ温まりの湯」「皮膚によく効く美肌の湯」。

腰痛、肩こり、神経痛、筋肉痛の人に人気があり、美肌効果も抜群という。湯冷めしにくい40度のぬるめと42度の熱めの2種類がある。

常連客と世間話に花を咲かせる髙橋大和社長(中央)

「ここのお湯は温水プールの消毒に使う塩素で弱った肌にとても良い」

82歳だという水泳が趣味の手形からの常連客、佐藤さんに話しかけられた。「消毒剤の塩素で肌が荒れて痒くなるんだな。新屋温泉に浸かれば直る。強塩泉が私の肌に合うのかな」

 

源泉をなめてみた。しょっぱい!髙橋社長の先代松之助は製材業を営みながら秋田大学の成人講座で地質学を学び、専門家に温泉は出ないと否定されたが掘削を決意。平成8年3月から5ヵ月を要して約1千万年前の地層から温泉を掘り当てた。入浴施設は息子の髙橋社長に引き継がれ、平成15年7月にヒバの巨木を生かした大型の木造建築物として完成した。

1千万年前、大規模な地殻変動があった。その時、海水が地下に閉じ込められた。その海水が温められて現代によみがえったしょっぱい温泉。

「どうですか。悠久のロマンを感じさせる新屋温泉の湯加減は?」。髙橋社長が館内を忙しく動き回った。