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お〜い マツタケ出て来い! 松茸山の落札大暴落 横手市雄物川町 きのこ紀行

(雪国TODAY2017年10月号/全部3800文字/写真13枚)

この日の団体客は長崎県の一行。厨房で品定めをする料理長の顔が険しい。手に取ったパックの中は3本の岩手県産マツタケ。「うーん、香が少し弱いかな。やっぱり地元産の朝採りが良い」。

松茸(まつたけ)山が風前の灯火の横手市雄物川町の雄川荘で「松茸料理まつり」が始まった。が、減り続ける雄物川町の今宿、沼館産の松茸。「お~ぃ、マツタケ出て来い!」。料理長が困っていた。(敬称略)

マツタケ収穫の季節となったが…

松茸まつりを1週間後に控えた雄川荘の厨房。料理長の丹正志(60)が腕を振るっていた。「せっかくマツタケの産地、しかも松茸料理の雄川荘にはるばる来てもらった。香だけでもね。お吸い物で味わってもらいたい」

とはいえ、いまや雄物川町のマツタケは松茸山のアカマツの高齢化、マツクイムシ

の被害で風前の灯火だ。

 

 

秋田県内のマツタケの最大産地の今宿、沼館集落は出羽丘陵の東側斜面。県内で唯一、松茸山があり古くから住民が入会(いりあい)権を設定。松茸山は住民の入札によって利用権を決めてきた。

 

入会権とは、村落共同体などが、山林原野の土地を所有し、伐木・採草・キノコ狩りのなどの共同利用を行う慣習法。

雄物川町産の松茸を待望する丹料理長

「松茸山は入会地の入札制度によって守られてきた今宿、沼館のかけが

えのない財産。入札制度があってこその松茸山」と丹料理長。

 

「私の義父も松茸山を落札していた。収穫期になると家族で、あるいは友人を招き山小屋で逆さ松茸酒を楽しんだ。マツタケを炭火で焼いて逆さにして傘の部分に日本酒を注ぎ込む。美

味かったな。その味覚は料理人としての原点。松茸料理が名物の雄川荘で

は野趣あふれる料理を提供している」

 

しかし、マツタケは岩手県産や輸入品に頼らざるを得ない。かつて五輪金メダリストの髙橋尚子も参加した雄物川松茸マラソンも途絶えて8年になる。

「賞品のマツタケが採れなくなった。他県産を賞品にするわけにはいかない。残念だ」と横手市まちづくり推進部の佐藤健一郎。

 

2枚の写真がある。入札制度を聞こうと今宿の小沢秀宏(70)を訪ねた。

 

——この写真は我が家の松茸山で30年前に撮影したもの。収穫したマツタケを誇らしげに並べているのは長男。もう一枚は松茸山を取材に来たテレビ局の記念写真。

見事な太さの立派なマツタケだ。今はこんな大きなマツタケは手に入らない。このサイズが当たり前。それほど雄物川産は素晴らしかったーー

雄物川町の収穫量は1975年1234㌔、80年862㌔、85年642㌔、90年410㌔。

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