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岩手競馬 阿部騎手(鹿角市出身)レジェンドへ疾走 けが克服 1600勝は通過点 カタールで日本人騎手として始めて優勝

(雪国TODAY2017年9月号/全文3600文字/写真11枚)

岩手県水沢競馬場の夜が白々と明けてきた。朝もやの中から蹄(ひずめ)が地面を蹴り上げる音が迫っては遠のき、サラブレッドの激しい息づかいが聞こえてくる。騎手、厩務員の調教が黙々と続いている。国内に数百万人のファンがいるといわれる競馬。その一翼を担う岩手競馬。トップ騎手を維持し続ける秋田県鹿角市出身の阿部英俊を追った。(阿部は2019年2月23日カタールのアルライヤン競馬場で日本人騎手として始めて優勝し、歴史に名を刻んだ)(敬称略)

まだ夏の夜が明けない午前2時半、水沢競馬場に照明が灯った。隣接する厩舎ら厩務員に引かれたサラブレッドが続々とゲートをくぐり馬場に入って来た。岩手競馬に所属する36厩舎の馬数は育成なども含め約600頭。このうち水沢を拠点にするサラブレッドは約400頭。厩舎はこの日も午前2時半から午前9時まで約300頭に順繰りに攻馬(せめうま・調教)を行っていた。

スタンドの別棟2階にある調教師ルーム。「きょうの攻馬は何頭?300頭もいる?」と調教師の一人。阿部騎手が所属する佐々木由則厩舎の優駿が馬場に入って来るとそのうちの1頭を指差し、「ほう、馬体が良いし、毛艶もある。歩様に力強さがある」向こう正面を疾走する3歳牡馬レイバックのタイムを計測していた調教師がうなった。騎乗する阿部騎手を双眼鏡で追いながら「レイバックはJRA(中央競馬会)から岩手競馬に転籍し、初参戦の馬。8月15日の盛岡競馬場第1レースの初騎乗はベテラン阿部に任せる。彼がどれだけこの馬の能力を引き出せるか」

通算1600勝を達成した阿部英俊騎手

"逃げのアベ"の真骨頂。盛岡競馬場で疾走する阿部英俊騎手(中央)

メーンスタジアムの競馬記者クラブ。午前2時には記者室に入り、各馬の取材に忙しい専門紙3社の記者。午前9時までの攻馬の取材力が勝ち馬予想の的中率に反映し、彼らの真価が問われる。「レイバックのタイムは?」と記者室に鋭い声が響くと、「向こう正面6番表示から8番表示までの直線200㍍14秒8!」と双眼鏡をのぞきながらストップウオッチを手にした計測係。夜が明け始めたころ、記者の取材が佳境を迎えた。「落馬による大けが。1年半の療養を経て昨年からレースに復帰した。彼は本調子に戻りつつある。岩手競馬レジェンド(伝説)への疾走が始まった」とコラム担当記者がパソコンのキーボードを打ち始めた。

8月15日、盛岡第5レース。第4コーナーを回り先頭は阿部騎乗
エイブリルラヴ、ゴール前100㍍で並ばれ、鼻差でかわされ2着

逃げのアベ”の異名を持つ阿部英俊44歳。鹿角市湯瀬出身。1992年、岩手競馬にデビュー。所属は水沢競馬場。デビュー戦は10月24日の第10レース。

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