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国内で星空の最も美しい東成瀬村の仙人修行 俗界断つめざせ不老不死

(雪国TODAY2017年8月号/全文4300文字/写真9枚)

落差30㍍の不動滝。白装束の男性は「九字」を切った後、滝つぼに入った。
唱える般若心経は水の音にかき消された。「凛とした見事な滝行」と住職。この夏も明日から秋田県東成瀬村で全国各地から老若男女が参加し、33回目の仙人修行がスタートする。滝行に加え、断食、座禅、写経もある。「暑気払いにあなたも気軽に仙人修行はいかが」と言ったら不謹慎だろうか。
(2019年も8月2日から35回目の仙人修行が行われる。参加者募集中)

 

国内で最も星空の美しい村という東成瀬村。岩手県と宮城県との県境に位置する奥羽山脈ど真ん中の山里だ。
村役場にある東成瀬村観光物産協会。仙人修行を担当する佐々木征子さんは、全国各地からの問い合わせに追われていた。

 

定員は25 人。佐々木さんのデスクの電話がまた鳴った。「もう募集は締め切ったが、今の電話も参加申込の問い合わせ。これで29人。男性20人、女性9人となった。
もう少し増えるかも。定員を超えたが、せっかく秋田の山里を訪れたいというのだから断れない」

仙人修行と日本一美しい星空をPRする観光物産協会の佐々木さん

今年の仙人修行は県内参加者11人、首都圏7人、その他は全国各地。「役場がある村の中心部の住所は「東成瀬村字仙人」と話し、「仙人修行は33年前に村興しの一環として始まったイベント。私が生まれる前のこと」

そもそも仙人ってどんな人?
辞書によると、人間界を離れて山の中に住み、不老不死で飛翔できる神通力を持つ山人(やまびと)。また、仙人とは、道教で理想とされる神的存在。道教とは中国古代の民間信仰を基として不老長生、現世利益を目的に自然発生的に生まれた宗教。後に仏教の教理儀礼を取り入れたが、儒教などの人為的な道徳や学問を否定し、無為自然を説く。いずれにしても仙人は不老不死の神秘的な存在だ。

奥羽山脈の奥深い山里・東成瀬村。「遠い昔は俗界から離れた山の民が住む集落だったと思う。横手市の十文字、増田町の人たちから見れば東成瀬村の人々は仙人のような暮らしぶりだったのかな。それで住所も「仙人」に。
この地名が神秘的で大好き。美しい星空も魅力的」と佐々木さん。

秋田国際教養大の千葉彩輝さん(左)と加藤美歓さん(キャンパスで)

仙人修行参加者の目的も多様だ。自らを見詰め直したい人や日本文化に触れたい人、心身の鍛錬を目的にする場合も。「なんだか楽しそうだから」という人も。

夏休みに入った秋田国際教養大。夕暮れのキャンパスはフットサル部が練習に励み、隣の芝生ではラグビー部がスクラムの練習を開始した。学食では学生たちの会話が弾んでいた。

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国内最古の木造芝居小屋 ・康楽館 現代劇女優を魅了 熱い! 松竹歌舞伎も下町かぶき活況 秋田県小坂町

(雪国TODAY2017年8月号/全文3600文字/写真13枚)

歌舞伎役者・中村吉右衛門の余韻がさめやらぬ秋田県小坂町の康楽館。人情芝居に出演した現代劇の女優は充実した表情を浮かべ、次の公演先となる東京へと向かった。この夏も人情芝居と歌舞伎が繰り広げられた国内最古の芝居小屋。人情芝居も歌舞伎もルーツは同じ出雲の阿国の“かぶき踊り”。江戸、明治期の芝居小屋を彷彿させる康楽館が役者たちを魅了している。

国内唯一の人力回り舞台。スタッフが渾身の力を込めて奈落の「ろくろ」を回す

7月7日から3日間にわたって行われた恒例の松竹による康楽館歌舞伎大芝居。屋で芝居を終えた中村吉右衛門が化粧を落としている。「康楽館で芝居をするたびに思う。舞台と観客との距離の近さ。観客の一人一人の顔が見える。距離の近さが観客と役者の一体感を生む。そして木造劇場のぬくもりがある」。吉右衛門は康楽館に遠い昔の歌舞伎勃興期の隅田川界隈の山村座、中村座、市村座、森田座の江戸四座を見た。

 

康楽館が若手俳優の心をつかんでいる。1ヵ月に及ぶ公演を終え、現代劇の女優は満足感に浸っていた。「こんなに観客の温かさを感じる劇場で演技ができて役者冥利に尽きた。どうしても国内最古の木造芝居小屋・康楽館の舞台を踏みたかった。それに大衆演劇がこんなに熱いなんて知らなかった。良い経験になった」

康楽館7月の常打ち大衆演劇「十六夜心中」に出演した春可直子。

1990年7月、東京都東村山市生まれ。日本大学芸術学部演劇学科を卒業。円・演劇研究所を終了。現在は東京・西麻布の芹川事務所に所属し、都内の小劇場で現代劇を中心に活動している。

現代劇の女優・春可直子は1ヵ月に及ぶ康楽館「下町かぶき」公演を終え、充実した表情で帰京した

2014年に山下悟演出の「夏の夜の夢」で、女優としての地歩を固めた。現在は演劇ユニット・ジ〜パンズにも参加。下北沢にあるシアター771にも活動の場を広

げている。「十六夜心中」は江戸・深川界隈が舞台。恋仲となり身請けした芸子が実は妹だったというあらすじ。2人はその事実を知って心中する。春可は茶屋の女中としてコミカルにストーリーを展開していく役どころ。「この劇は人情芝居の大

 

衆演劇そのもの。論理的で考えさせる社会派の現代劇と対極にある。もちろん現代劇と歌舞伎はもっと距離がある。人情芝居で観客は理屈抜きで物語に入り込んで笑い、涙し、楽しむ。庶民の娯楽として出雲の阿国の“かぶき踊り”そのもの。康楽館で芝居の原点を体感した。この経験を今後の私の現代劇に生かしたい」との言葉を残し、春可はこの日の公演終了後、一座より一足早く康楽館を後に。来月から東京・築地本願寺ブディストホールで上演される白血病の友人をテーマにした「友情」

の打ち合わせ向かった。

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