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角館さくら紀行 武家屋敷通りに「緑降る」枝垂れ桜は4度咲く 79番木の1年

(雪国TODAY2017年6月号/全文3200文字/写真9枚)

秋田県角館の枝垂れ桜は4度咲くという。深い木立と重厚な武家屋敷構えが藩政時代の面影を残す内町と外町。料亭主人のブログ「角館紀行」は4000回を超えた。「枝垂れ桜は4度咲く」と発信し続け、いまや貴重な観光資源となっている。そればかりではない。日本の絵画史に名を刻んだ解体新書の小田野直武や平福父子の色彩、写実主義も4度咲く枝垂れ桜から生まれていた。

角館の武家屋敷通りに緑が降るかのようだ

 

「葉桜という言葉がマイナスイメージ。花が散って、もうおしまいという語感がある。角館の桜の魅力は来年の花の満開まで続く。桜は4度咲く」。日課の早朝の散歩に出かけるため裏木戸の門を出て来た田町武家屋敷通りと接する上丁の料亭稲穂の主人、後藤悦朗は眠たげに目をこすった。「花は散ってしまったが昨夜も料亭を訪れた観光客の対応で就寝は遅かった。冬はともかくとして年中訪れる観光客で角館は活気がある。桜に感謝しなければ」角館の枝垂れ桜は内町、外町を中心に約

400本。今から約330年前に佐竹北家が角館を治めてからほどなく植えられている。樹齢300年を超える古木も。このうち国の天然記念物に指定された桜は168本。全てに番号が付いたが、実際に数えると162本となっている。

 

 

後藤が外町から内町へ回る1時間の散歩道は、天然記念物の枝垂れ桜を巡るコースと重なっている。料亭の帳場。散歩を終えた後藤が「萌黄色の枝垂れが黒板塀に映え、一幅の山水画となっていた。もうすぐ枝垂れがまるで緑が空から降り落ちて来るような眺めに変わる」と話し、パソコンに保存したデータから4枚の写真を選んだ。

写真は4枚とも後藤が定点観察に使っている天然記念物79番木。散歩終盤の平福記念美術館向かいの武家屋敷通り沿いにある枝垂れ桜だ。推定樹齢196年。「79番木は一本桜で定点観察に適している。均衡がとれた枝振り。立派な枝垂れ桜」と後藤。枝垂れが初夏の風にそよいでいる。「『緑降るさくら』と名付けている。葉桜とは言わないよ。もうすぐ“緑満開”」と後藤。「なぜ、角館の枝垂れ桜がこんなにも愛されるのか。それは黒板塀の黒と歳月を重ねた褐色の武家屋敷、漆喰の白が枝垂れ桜の背景にあるからだ。散った直後の萌黄色で始まり深い緑へと移ろう枝垂れの緑。このコントラストが素晴らしい。武家屋敷通りが初夏の野鳥の鳴き声、盛夏の蝉時雨、晩夏の虫の音に包まれると、藩政期にタイムスリップした気分になる」と付け加えた。次の1枚。

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潮風に吹かれて 秋田〜潟上市・前浜の初夏 豊穣の海 北限のフグ丸まると

(雪国TODAY2017年6月号/全文1100文字/写真4枚)

快晴の秋田市。出戸浜から海の向こうに鳥海山がくっきり見える。秋田港中島埠頭に秋田海上保安部の大型巡視船「でわ」が停泊している。その背後の展望タワーに日差しが反射している。岸壁でのーんびりと釣りを楽しむ人も。
漁港では北限のフグが次々とせり落とされていく。秋田港を起点に漁師や仲買人たちが前浜と呼ぶ潟上市天王の漁港までの海岸線を巡った。

水揚げされた丸々と太った北限のトラフグ。次々とせりにかけられていく

網かごに入った丸々と太ったトラフグが次々とせりにかけられていく。「オーッ」と特大サイズに仲買人がどよめいた。

潟上市にある秋田県漁業協同組合天王支所。旬は終わったがトラフグのせりは熱気にあふれている。その様子に小型定置網・政漁丸(9・7㌧)の藤原正則さんは複雑な表情だ。

「北限のフグとして全国に通用するブランド確立を急がねば」。
出戸浜沖合から漁港沖の“前浜の海”はトラフグの北限の産卵地。前浜のトラフグは以前から国内一の産地・下関市場へと流出していた経緯があり、そうした実情は現在も続いている。

トラフグのせりが始まると熱気

仲買人の戸田広樹さん

活魚として首都圏に出荷されるトラフグ

前浜のトラフグ漁は沖合1〜5㌔、水深5〜27㍍で行われている。政漁丸はこの日、午前5時に出漁。トラフグはまずまずの漁獲だったという。「旬が終わればせり値ががくんと落ちてしまう。北限のフグとしてブランドが確立されれば、国内市場の価格と連動しないと思う。東京・築地市場(豊洲市場)や下関市場でも初夏も旬のトラフグとして高値がつくはず」と船長の藤原政則さん。

天王支所によると、トラフグの昨年4〜12月の漁獲量は2789㌔。せり値は秋口から一気に上がり1㌔8000〜9000円。昨年5月のせり値は2000〜3000円だったという。

「うーん、きょうのせりは微妙だったかな。重さ1匹5㌔平均で値がいま一つ」と支所長の伊藤幸道さん。

漁港と目と鼻の先で海鮮レストラン戸田苑を営む戸田広樹さんは仲買人でもある。「トラフグが高値となる秋口以降はせり落としを控える。築地市場と取引しているが、せり値と市場価格の差が少ない。もうけが少ない。せり値が落ちている初夏のこの時期が狙い目。仲買人の利益が大きくなる」と話し、「それにしても今日の値は安かった。1匹2000円に届かなかった」

丸々と太った前浜のトラフグは、首都圏の消費者に「北限のフグ」として味わってもらっているのだろうか。

近所の鮮魚店をのぞいた。小ぶりだが前浜のショウジョウフグが3匹で350円。今が旬だという。塩焼きにするとあっさりしていて美味だった。

第3海運丸(4・9㌧)がワラサ1㌧を満載して岸壁に着いた。船長の児玉清さんは「冬だったら寒ブリとして高値がつくのだが…」

竿燈 差し手支える職人魂 提灯の制作急ピッチ 竿、太鼓もラストスパート

(雪国TODAY2017年6月号/全文2300文字/写真8枚)

竿燈まつり本番まで2ヵ月半

秋田市の夏の夜空を彩る竿燈まつりまで2ヶ月半。提灯総数約1万個個、竿燈総数約280本。この秋田市最大の祭りを竿燈職人が陰で支えている。

 

竿や提灯、太鼓の制作に全力を尽くす職人。伝統の祭りが続けられるのも竿燈職人がいてこそ。差し手の技量の向上も妙技も差し手の注文に応える職人の技があってこそ。提灯、竿、太鼓の最後の仕上げに入った職人の技を見た。

 

技自慢の差し手の技がさえる竿燈妙技会。そのスリリングな演技は圧巻だ。その技の向上はとどまることを知らない。

その陰に竿、提灯、太鼓職人の技術開発、研究があることを知る人は少ない。差し手と職人の技比べ。差し手と職人が火花を散らし、華やかな竿燈まつりが観客を魅了している。

 

秋田市の八橋本町の小路に「提灯屋 高橋」の灯りがともっていた。

「本番まであと2ヵ月か。寝る暇もない」。提灯職人の高橋晴男が玄関口から出て来た。工房の中は天井から吊るされた竿燈提灯で埋め尽くされていた。

 

「今日は午前10時から午後3時まで最後の仕上げとなる油塗り作業。今日は100個だったかな。絵付けもまずまずの出来。あとは2週間ほど乾かしてロウソク台を取り付ければ完成」

「提灯屋 高橋」の工房。高橋さんの提灯制作が佳境を迎えた

「ちょっとこれを見て」と指差した提灯はキリンビールが注文した乾燥中の提灯。颯爽と走る伝説の動物・麒麟(きりん)が描かれている。

「いやー、これには参った。この複雑な絵柄。1個描くのに費やす時間といったら。仕上げまで気が遠くなる」。上米町二丁目の「伊達牡丹」のぼかしが入った

 

絵柄もある。「このぼかしが難しい」。上米町一丁目の絵柄はウサギの餅つき。「人は太陽と月を神として崇拝し、ウサギは月の精と考えられていたからこの絵柄ができた。米問屋が多かった上米町。先輩たちが考案した伝統の絵柄。町内竿燈の絵には一つ一つ伝統がある。だからいい加減な絵は描けない」

竹ひごを木型に巻いて作る提灯の火袋

2階の工房へ案内された。竹ひごで提灯の本体となる火袋を製作中の現場。火袋の木型に竹ひごがぐるぐる巻かれている。1個の提灯に使う竹ひごの長さは50㍍。「竹材は全て特注だ」と高橋。

 

大若の提灯総数は46個、高さ64㌢と規定されている。「提灯屋 高橋」は今年の竿燈に向けて約1,000個の注文を受けた。

 

妙技会加熱 軽量化進む

華麗に、雄大に、力強くーー強まる要求

 

差し手が1年かけて磨いてきた技を競い合う妙技会。夜竿燈の華やかさとは一転、差し手の真剣勝負の場となる。

 

上米町1丁目からは大若の提灯60個の注文。上米1丁目は妙技会上位の強豪だ。

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