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「平鹿りんご」ブランドは残ったか あの豪雪、産地崩壊から5年 果樹園再生へあと一歩

(雪国TODAY2016年12月号/全文3050文字/写真6枚)

平鹿から増田に抜けるフルーツライン。真っ赤に実った「平鹿りんご」

ぐっと冷え込んだ未明の秋田市外旭川にある秋田市公設地方卸売市場。場内を熱気が包んでいる。

「平鹿りんごはもう大丈夫だ」。せりに出された大玉ふじを前に買参人から安堵の声が漏れた。

産地は5年前の大雪で壊滅的な被害を受けた。その後も雪害は続いた。奥羽山脈の山裾に広がる平鹿地方のリンゴ農園の、いまを見た。

平鹿から増田に抜けるフルーツライン。リンゴを選果場に搬送する軽トラックが忙しく行き交っていた。目を山裾に移すと真っ赤に実ったリンゴの果樹園がどこまでも続いていた。

 

 

平鹿町醍醐のまぐらりんご直売所。「今年の出来はどう?東京の息子たちに送りたい。ふじ、王林を混ぜ合わせて一箱注文ね。早生のトキ、ヤタカも良い味だったよ」。

 

客の注文に直売所を経営するかねさく果樹園の斎藤裕作さん(68)は「あの時はこんな日が再び来るとは思えなかった」と話した。

フルーツライン沿いの「まぐらりんご直売所」

あれから5年。果樹園に活気が戻ってきた。

初冬のJA秋田ふるさと醍醐選果場。「今年はふじに期待したい。台風被害もなかった。やれやれだ」と生産者の日焼けした顔は柔和だ。

選果レーンに次々に運びこまれるリンゴ。パートの女性たちが手際よく選別している。「これからが選果の本番。主力のふじ、王林の選果は2月まで続く」とJA醍醐選果場の冨岡祥吾さん。

 

「やっと6割程度まで回復した。取扱量は主力ふじがかつての7割。ここ数年は半分程度になってしまった。雪害を経て生産者の多品種生産によるリスク分散が続いている。いまでは20品種も扱う」

 

平成23年、晩秋の果樹園に荒涼とした景色が延々と広がっていた。既に再生不可能なリンゴの木は伐採され、残った根元だけが無惨にさらされていた。JAの選果場にリンゴはなかった。「平鹿ブランドは絶対に残す」。生産者は悲痛に声を絞り出した。

この年、横手、平鹿、増田地域は正月明けから3週間にわたって雪が降り続いた。1月の降雪量はアメダス観測史上最大。同月の最深積雪量も史上1位だった。リンゴ農家の高橋範夫さん。

 

「年が明けてまもなく異変を感じた。雪がやまない。山間部の農園は除雪ができない。うず高く積まれた雪の中を歩いた。平地の農園に到達したときは疲労こんぱいだった。

平成23年冬、雪に埋もれてしまった果樹園。懸命に除雪

積雪は4㍍。降り積もった雪を見上げた。いつしか雪はやみ、空は冬晴れになっ

ていた。木を雪の重みから守るために掘り起こした。まる1日の作業で疲労はさらに増した。それが2ヵ月間も続いた」

 

そのころ、山本薫さんの園地も既に雪に埋もれていた。

 

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男鹿の海 季節ハタハタ接岸はあるのか 未明の海に雷鳴 荒波に揉まれ漁船出航

(雪国TODAY2017年2月号/全文1800文字/写真2枚)

♪ハイ キタカサッサ コイサッサ コイナー いずれこれより 御免なこうむり 音頭の無駄を言う アーソレソレ 八森ハタハタ 男鹿で男鹿ブリコ♪—— 冬の日本海の荒波から軽快な秋田音頭が聞こえた気がした。ハタハタ接岸はあるのか。男鹿の海のクライマックスが近づいた。

ハタハタ本番。水揚げされたハタハタを岸壁で仕分け(男鹿・椿漁港)

まだ、夜が明けぬ。雷鳴が轟いた。北浦漁港の防波堤から小型刺し網漁船が次々と出て行く。シベリアからの寒気が南下し、半島はこの冬一番の寒さ。季節ハタハタ接岸の条件がそろった。沖合では漁船が木の葉のように高波にもまれている。

 

ハタハタ接岸の1週間前。底引き網漁から季節ハタハタ漁への変わり目の半島を巡った。

 

椿漁港に集結する八森の底引き網船団、小型船中心の北浦漁港の漁師たち。のんびりムードが漂う北浦漁港。なぜか。常夜灯が岸壁を照らす北浦漁港。野石漁港所属の第八白龍丸(14トン)が夜明けの海に滑り出た。6日ぶりの漁に乗組員の表情が和らいでいる。

 

大荒れだった海が前線の通過とともに波が収まり絶好の漁日和となった。西の風4㍍、波はないが、うねり2㍍。八竜沖に仕掛けた定置網まで時速10・5ノットで1時間。

 

船長の佐藤優さん(57)は「漁師は魚を獲ってなんぼの世界。高値となる最終盤のサケ漁が悪天候で休漁。その分を取り返す。サバかスズキいずれかの群れに当たるだろう。値の良いヒラメがどれくらい混じるか。1週間後にはハタハタ漁だ」と話した。

 

北浦の漁師は季節ハタハタの前にサケ漁で稼ぐ。漁協組合員で組織する北部定置協会は地区を流れる大増川を遡上するサケから採卵。ふ化させた後に放流している。

漁協の浅井和博支所長は「サケの漁期は9月から3カ月間。11月のサケは天然もので高値。だから終盤の天候による休漁は痛い」と話す。

 

漁協の9、10月のサケの漁獲は約90トン。北海道のサケ漁不振で今年は例年の2倍

の値がついている。午前6時、船上では定置網の引き揚げが始まっていた。網いっぱいのスズキに混じってヒラメが目立つ。

 

網揚げをアームから手作業に変更した。ヒラメを1匹ずつタモで捕獲した。「傷をつけるな。生かしたまま船倉のいけすに入れる」と船長。

1カ統の網揚げに2時間を要した。この日は2カ統の網揚げで1トンの漁獲。このうちヒラメの漁獲は280㌔。全て活魚として仲買人に渡った。

 

 

今期の季節ハタハタ漁について佐藤船長に聞いてみた。「刺し網の漁獲制限が厳しい。ハタハタが減少している。ハタハタで稼げない。ここ数年、浜がブリコで埋まることはない」

男鹿・椿漁港にハタハタを水揚げした八森漁港所属の底引き網漁の船団

白龍丸が出航する1時間前、八森の岩館漁港所属の第2海運丸(19トン)が僚船の玄辰馬丸、第58広福丸と入道崎􁻖北浦沖合の水深260㍍の海域に向けて出航した。4日ぶりの漁だった。漁場まで1時間20分。八森の船団は11月8日から椿漁港に集結し、ハタハタの底引き網漁を行っている。西風がやや強く、うねりの高さは2〜3㍍だった。

 

午前6時50分、底引き網を水深260㍍の海域に投入。時速1〜2ノットの低速で1時間走り続けて最初の網揚げ。午前中で漁を終えた。船長の菊地陽一さん(37)は「魚群がだいぶ厚くなってきた。ハタハタの北浦沖集結が始まった。ハタハタ接岸の直前だと思う」と推測した。

 

第2海運丸のこの日の水揚げは1000箱(1箱3㌔)。菊地船長は「自分たちで上限を1000箱に決めている。大切な資源を守りたい」と話し、「秋田県沿岸がハタハタの海であり続けてほしい」と夕暮れの海を見詰めた。

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♪ハイ キタカサッサコイサッサ コイナー

八森ハタハタ 男鹿で男鹿ブリコ♪

——本当にそう思う。

 

 

データボックス

 

ハタハタ再び激減秋田県や県内漁協でつくるハタハタ資源対策協議会(遠藤実座長は、2016年漁期(今年9月〜17年6月)の漁獲枠を前年と同じ800トンに決めた。

 

稚魚の生存率の低さなどから資源量減少が見込まれることが要因。2年連続で1000

トンを割り込む低水準となった。県水産振興センター(男鹿市)は、流通管理や資源の基礎となる1歳魚の保護を徹底するように求めた。

 

漁獲枠は1988年(600トン)以来の低水準が続き、漁業者には収益確保に向けた経営の工夫が求められる。配分は例年と同じく沿岸漁6割(480トン)、沖合漁4割(320トン)と設定した。