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決断 ある帰郷 庭は見ていた 14代当主・直光さん  解体新書の謎 角館の武家屋敷・小田野主水家

(雪国TODAY2016年11月号/全文3900文字/写真9枚)

小田野家庭園を見入る14代当主の直光さんと妻の春江さん

調査船上から見る田沢湖の湖面は刻一刻と姿を変えていた。湖面の流れ、湖面に映る駒ヶ岳、太陽に照らされる湖面の輝き。田沢湖の美しさに心を打たれた 。湖底調査を始めて1週間が過ぎていた。「古里に帰るときがきた」。彼は決断した。胸に込み上げるものがあった。角館の武家屋敷「小田野家」の小田野主水家14代当主・小田野直光さんの“ある帰郷„を伝える。

 

小田野家一門400年の人々を見てきた庭園が紅葉のピークを迎えていた。

中央線吉祥寺から京王井の頭線2つ目の駅、三鷹台で妻の春江さん(57)が下車した。

 

今春、仙北市に移住して以来、月1回の上京。転居したもののピアノのレッスン

 

を続けている。「先生、角館の紅葉素晴らしいですよ。庭のモミジ、枝垂れ桜、ドウダンみんな真っ赤に染まるんです。紅葉が終わると冬景色。いいでしょう」と今夏、角館の小田野家を訪れたピアノを指導する松本美都子さんに話した。「私も小田野家13代の妻たちが愛した庭とともに生きていく」

小田野直武が描いた「解体新書」の表紙

東京都調布市生まれ。東北大学大学院修了後、運輸省船舶技術研究所入り。田沢湖の湖底調査当時は海上技術安全研究所(海技研)統括主幹だった。専門は海中機器の運用、開発プロジェクトの推進。使用済み原子力廃棄物の搬送も専門分野だ。

 

日本で最も深い湖、田沢湖の水深423・4㍍に海技研と仙北市は水中テレビカメラを潜らせるプロジェクトを実施。プロジェクトの経費は全て海技研が負担した。門脇光浩市長は「調査は市の最大のプロジェトになる。クニマスが生息しているかもわからない。温泉が湧いているという話もある」と夢を膨らませた。

2015年、海技研が主導して仙北市と実施した田沢湖湖底調査

 

昨年9月下旬から2週間、田沢湖の湖底調査を主導した。調査は三井造船製の水中小型ロボットを投入。調査エリアは最深部と湖底2カ所にあるマウンドと呼ばれる丘が中心だった。午前6時から午後4時まで湖の中央で寒風にさらされながら湖底のデータを収集した。

 

田沢湖には苦難の歴史がある。第2次世界大戦中、水力発電などのため、別の水系だった強酸性の玉川の水が引き込まれて水質が激変。固有種のクニマスが絶滅した。

 

2010年、田沢湖から移されたとみられるクニマスの生息が70年の歳月を経て山梨県の西湖で確認された。クニマスは西湖、本栖湖、野尻湖に移植されたことが分かっており、西湖の移植については1935年に10万粒の発眼卵が移植されたとの記録がある。

クニマスが生息する田沢湖は市民の悲願。

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秋田内陸線 紅葉の森吉山をゆく 邂逅の森 熊よ鎮まれ クマと共に生きる人々

(雪国TODAY2016年11月号/全文2360文字/写真8枚)

邂逅の森 紅葉の森吉山麓を走る秋田内陸線

森吉山頂上から見下ろす森は紅葉で赤く染まっていた。阿仁マタギ・松橋富次の生涯を描いた熊谷達也の直木賞受賞作『邂逅の森』の山々が眼下に広がる。邂逅(かいこう)――巡り会い、出会いの深い森。山の神・熊との壮絶な闘いの舞台となる奥阿仁周辺をたどった。

邂逅の森 紅葉の森吉山麓を走る秋田内陸線

 

「運転席からクマをよく目撃しますよ。駅の近くではなく、森の中を走っているときが多い。当たり前と言えば当たり前。クマの領域を走っているんだから。クマを頻繁に目撃するのは森吉山麓の戸沢、阿仁マタギ、奥阿仁、比立内各駅から阿仁合、阿仁前田駅間。仙北市に入るとクマの目撃は減る」と角館駅に到着した秋田内陸線の運転士、松崎守さん。

 

熊谷達也は『邂逅の森』について語っている。

野生の動物を追い、自らの手で仕留める興奮と快楽が、狩猟の本質であることを知った。同時に、それによってこそ彼らが生かされていることや、絵に描いたような山間僻地の小さな村に踏み止まり、山と共に暮らしていられることも、私は知った。

伝説のマタギ・鈴木松治

彼らに流れる狩猟民の血は、実は、都会に暮らす我々の中にも、等しく眠っている。それが時として暴れだすと、手に負えないものとなり、社会生活の破壊者とな

ってしまう。だが、猟により、その血を解き放つ経験を蓄積しているマタギたちは、人間に潜む野性や獣性、そして欲望を制御する術(すべ)も知っている。

人懐っこいクマ牧場のクマ

 

山に入ったマタギは、同じ人間とは思えないほど、里にいる時とは顔が変わる。存在そのものが変容する。そんな人間の生の姿を、私は『邂逅の森』という小説で描きたかった。

 

衝撃的な数字だった。県自然課は今年の10月15日までのクマの捕獲数を450頭と発表した。それによると、統計が残る1963年度以降最多の2001年度の420頭を上回った。春先に行う計画捕獲は19頭。431頭が有害駆除されたことになる。

 

地域振興局別では北秋田市の119頭が最も多く、仙北78頭、鹿角、雄勝が53頭ず

つと続いた。自然保護課は4月時点で生息数を1025頭と推定していた。

 

 

「2013年と昨年はクマの食物となるドングリ、クリの実が豊富だった。この間に子グマが多く生まれ、栄養不足で死ぬ個体が少なかった。クマの数が大幅に増えた可能性が高い」と推測している。

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