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肥沃な転作田でエダマメ日本一へ 農家に予想外の収入 秋田駅前の居酒屋 枝豆談議の夜は更けて

(雪国TODAY2016年9月号/全文2030文字/写真3枚)

客は生ビールをぐいっと呑み、お通しにとテーブルに出されたエダマメをせっかちに口に入れた。この動作を数回繰り返し、やっと落ち着いた。秋田駅前の居酒屋。地元産のエダマメが最盛期を迎えると客足が伸びる。ビールの友になくてはならないエダマメ。このエダマメ生産量、今年も秋田県が日本一になるのか。関係者は気をもんでいる。

県産エダマメが最盛期を迎え、エダマメ談義が弾む居酒屋

 

「やっとエダマメの地場産が盛期を迎えた。こうなるとビールのお代わりが5割増しになる。冷凍物では味がね、いまいちなんだな。外国産はちょっとね」と、店の亭主。駆けつけ一杯の客はネクタイを緩め、ビールとエダマメを追加注文した。少し赤らんだ顔は、地場産エダマメの味に満足気だ。

それにしてもこのところのエダマメがおいしい。かつて近所の農家から頂いてザルごと家族で食べたエダマメを「こんなに身が膨らみおいしかったかな?」と感じる人は少なくない。県内の本格的なエダマメ生産の始まりについて、県園芸振興課は「昭和40年代の減反政策で、県南部で本格栽培が始まった。50年代には稲作農家有志が生産部会をつくり、首都圏向けの出荷を開始。こうした動きが徐々に広がっていった。それ以前は農家が田んぼの畦に植えた程度。それを近所にお裾分けしていた」と話す。平成15年には品質向上と統一化を図るため、エダマメ産地連携チームがJA、県の呼び掛けで発足。同22年からはエダマメ販売戦略会議が生産量日本一を目指し、昨年、念願の日本一となった。ただ、これは日本一の群馬県が異常気象の被害を受けたという背景がある。

秋田市豊岩の農事組合法人・白華の郷。エダマメ生産量日本一を目指す

園芸振興課は「古くから県内で栽培されてきた在来の五葉豆は甘味が強く、風味が抜群」としている。県農業試験場はこうした在来品種の改良を重ね、たどり着いたエダマメが「あきた香り五葉」と「あきたさやか」だ。秋田の夏は、昼と夜の温度差が大きい。日中、光合成で得たエネルギーは、夜気温が下がると消耗が抑えられて糖分がどんどん蓄えられる。その結果、芳醇で濃厚なエダマメに仕上がる。「米の美味しい所は、土が肥沃で元気。当然、転作田で育ったエダマメも美味しい」と農業試験場。

秋田県のエダマメ作付面積は約970㌶。約1200戸の農家や農業生産法人が栽培しいる。出荷は7月下旬から10月中旬までで、90%以上が県外に。東京都中央卸売市場の7〜10月の秋田県産シェアは20・9%(昨年)にも及ぶ。横浜市場や名古屋、大阪市場にも出荷している。「エダマメは二日酔いを防ぎ、夏バテにも効くんだよ。まさにお酒の友」と前述の居酒屋の亭主。良質なたんぱく質を含み、ビタミンB1やビタミンCとともにアルコールの分解を促し、肝機能の働きを助けるエダマメ。加えて体内の糖質、脂質、たんぱく質などを分解してエネルギーに変える効果もある。栄養素以外にも脂肪やコレステロールを取り除くサポニンや血圧を適正にコントロールするイソフラボン、血中コレステロールを排泄し動脈硬化を予防するレシチンも含まれている。

美の国あきたネットは、エダマメの美味しい食べ方を紹介している。それによると、たっぷりのお湯で少量のエダマメを茹でることがポイント。1袋250㌘の場合、水は1・5㍑。7、8月のエダマメは塩60㌘(大さじ4杯)、9月以降は塩45㌘(大さじ3杯)で、茹で時間は4、5分。分量の塩を入れ沸騰したらエダマメを入れる。茹で終わったらザルに広げて冷やす。その後に好みに合わせて塩をまぶす。また、温かいうちに袋で密閉し冷蔵庫に置くと一層美味しくなるという。

園芸振興課は「農家が手間を掛けて作ったエダマメ。美味しく食べてほしい」と呼び掛ける。

惣平さんの直売所フル回転

ビールにエダマメは理にかなっていた。美味しく呑んで、食べて健康を目指すには、うってつけ。「ビールとエダマメ、お代わり」。店内に客の声が響いた。エダマメとともに秋田の居酒屋の夜が更けていく。

 

惣平さんの直売所が快進撃

菅原惣平さんの惣平さんの直売所フル回転エダマメが気をはいている。大仙市協和の国道13号から46号へと分かれる交差点の大曲方向に向かって数百㍍、左側に直売所がある。秋田市にも店舗を構えた。

こだわりのエダマメだ。「県が開発した品種に関係なく、美味しい品種を探し当て、全力で栽培する」と惣平さん。「少量多品種」を実践している。直売所では3〜5日刻みで新しい品種が登場する。「旬の味を心掛け、エダマメ作りを10年やってきた。これからだってこのスタイルは変わらない」。直売は23品種にも及んでいる。出荷は9割が自分の直売所、1割がJAで、道の駅などには出荷しない。1日に訪れる客は平日約80人。県外からも100ケース(200㌔)の注文がある。

「エダマメが経営の柱になるなんて思いもしなかった。大豆よりは金になるだろう」。惣平さんは、試しに家の前で、さりげなく直売を開始した。あっという間にお客さんが増えていった。直売所は今後、晩生種の「秘伝」「一人娘」「秋田香り五葉」「越後ハニー」「丹波黒」が中心となる。